世界に「日本人学校(日本語で授業を行う全日制の学校)」は、海外子女教育振興財団(https://www.joes.or.jp/introduction)によると88校あり、週末の一日だけ行われる日本人補習授業校(以下、補習校と略す)は204校あるという。タイ国内では、日本人学校はバンコクとシラチャに2校(バンコク日本人学校https://www.tjas.ac.th/unei)、補習校はチェンマイとプーケットに2校ある。 日本人学校と補習校の運営、組織形態は、それぞれの固有の成り立ちがある。チェンマイの補習校は、現在、小学1年生から中学3年生までの7クラス(中学校の3学年は人数の関係で2023年度は複式学級の1クラス)あり、また、就学前の日本でいる年中と年長さんの2年間の「レインボー」クラスが併設されている。両方を合わせて100人弱の子どもの規模である。
2023年2月11日(土)に、この補習校とレインボークラスの親向けと補習校の先生向けの二つの講話会を、こちらからお願いして開いてもらった。タイトルは、「子ども期の言語習得とアイデンティティ形成:0歳から13歳までの子ども期における二言語使用を考える」。子どもの言語習得とアイデンティティについて考える目的で、0歳から13歳までの子ども期の言語発達の年齢に即した段階を説明し、その段階と二言語以上で育つ言語獲得と言語習得の話を繋げた。
この講話会を開いた経緯は、今回の科研研究「越境する日本人国際結婚家庭の教育意識:アジア五か国でのライフストーリーから」の調査をチェンマイで行うに当たって、補習校に関わる国際結婚の親御さんたちへのインタビューをさせていただいた、研究者としてのお礼としてお願いしたわけだが、実際には、予想以上の子どもたちの親や補習校の先生と直にお話しできたことで私が学んだことが多かった。チェンマイの補習校での講話会ではあったが、そこで浮かび上がってきた課題は、国外で日本語を家族の中でどう位置付け、また教えたらいいのか、国外に住みどのように「日本語」を育てられるのか、国外で子育てをする親や教師に共通している悩みであった。
国際結婚と国外でのバイリンガル子育ての当事者の私が、学術的理論だけではなく、自分自身のインターナショナルスクールの教師としての、またバイリンガル子育ての親としての経験について話したことで、チェンマイ補習校の子どもたちの親や先生を少しでも励ますことができたとしたら、それがこの講話会の何よりの成果だったに違いない。