(論文)タイ在住日タイ家庭における教育に関する意思決定についての考察
渡辺幸倫
Phetcharee Rupavijetra
Jiraporn Chompikul
Ploypailin Rupavijetra
Phetcharee Rupavijetra
Jiraporn Chompikul
Ploypailin Rupavijetra
要旨
過去数十年の間に、タイ人と日本人の組み合わせをはじめアジアにおける結婚移民が増加した。しかし、これまでの研究では、移住する妻のホスト社会への適応と統合に関する課題や、これらの結婚が上昇婚的(より高い地位の配偶者と結婚する)であることが強調されることが多く、移住する夫や非上昇婚的結婚を視野に入れた研究は限定的であった。そこで、本研究では、アジアで移住する妻と夫の双方、特にタイへ移住した日本人移住者とタイ人配偶者の家族における子育てについての意思決定過程に焦点を当てた。子育ては社会の状況に応じた調整の連続であり、その家族の価値観が顕在化しやすい。本研究では、タイ在住の「日本人配偶者と子育て中のタイ人」5名とそのうち3名の配偶者である「日本人結婚移民」へのインタビューを行い、それぞれの家庭で使われている言語や学校選択など、彼らの教育的意思決定について検討した。インタビューは対面およびオンラインで実施し、内容分析によりテーマを明確化した。分析の結果、最初の出会いの場所、社会経済的状況、自宅の場所などの各種条件が教育上の決定に関係することが明らかになった。また、英語(教育)に対する強い思い入れも顕著であった。参加者全員が教育に関する意思決定を夫婦が共同して行ったと主張していたが、タイ人配偶者の生育環境、高い教育水準、海外経験、日本人配偶者のタイでの生活への選好、タイ社会での教育の選択肢についての知識不足などが、意思決定の過程の合理的語りの構成に寄与していることも推察することができた。
過去数十年の間に、タイ人と日本人の組み合わせをはじめアジアにおける結婚移民が増加した。しかし、これまでの研究では、移住する妻のホスト社会への適応と統合に関する課題や、これらの結婚が上昇婚的(より高い地位の配偶者と結婚する)であることが強調されることが多く、移住する夫や非上昇婚的結婚を視野に入れた研究は限定的であった。そこで、本研究では、アジアで移住する妻と夫の双方、特にタイへ移住した日本人移住者とタイ人配偶者の家族における子育てについての意思決定過程に焦点を当てた。子育ては社会の状況に応じた調整の連続であり、その家族の価値観が顕在化しやすい。本研究では、タイ在住の「日本人配偶者と子育て中のタイ人」5名とそのうち3名の配偶者である「日本人結婚移民」へのインタビューを行い、それぞれの家庭で使われている言語や学校選択など、彼らの教育的意思決定について検討した。インタビューは対面およびオンラインで実施し、内容分析によりテーマを明確化した。分析の結果、最初の出会いの場所、社会経済的状況、自宅の場所などの各種条件が教育上の決定に関係することが明らかになった。また、英語(教育)に対する強い思い入れも顕著であった。参加者全員が教育に関する意思決定を夫婦が共同して行ったと主張していたが、タイ人配偶者の生育環境、高い教育水準、海外経験、日本人配偶者のタイでの生活への選好、タイ社会での教育の選択肢についての知識不足などが、意思決定の過程の合理的語りの構成に寄与していることも推察することができた。