日タイ国際結婚家庭における言語使用:タイ人と日本人カップルの事例研究
- 学会名:8th Biennial International Conference of the Japanese Studies Association of Southeast Asia
- 日時:2023年12月20-22日
- 場所:チェンマイ
本研究は、タイに居住する日本人とタイ人の国際結婚家庭における言語使用の選択とそのダイナミクスを探究するものである。スノーボールサンプリングを用い、3組のカップルおよび日本人配偶者を持つタイ人2名、合計5名の参加者を選定し、半構造化インタビューによる質的データを収集した。
参加者の語りの分析を通じて、家庭内における言語使用と教育信念に関連する主要なテーマとその相互関係が明らかにされた。具体的には、タイ語、日本語、英語の3言語が家庭のダイナミクスにおいて重要な役割を果たしていることが示された。タイ語はタイ社会への統合のために不可欠であり、日本語は民族的アイデンティティの象徴でありながら、将来の投資としても重要視されていた。また、英語はグローバルな機会を得るために重要な教育要素として捉えられていた。
さらに、日本人親が家族内で日本語の使用を維持する際に直面する課題についても検討した。特に、タイ社会におけるキャリアの最適化が、日本への帰国を含むさらなる移住の可能性を制限しており、これが家族の言語選択や教育方針に影響を与えていることが明らかになった。
本研究は、タイにおける日本人とタイ人の国際結婚家庭における言語使用のダイナミクスと教育信念に関する新たな視点を提供し、他の多文化家庭にも応用可能な示唆を与えるものであると考える。
渡辺幸倫(相模女子大学)